穂躑躅(ホツツジ) ツツジ科

穂躑躅(ホツツジ)は、宇奈月の山に生えるツツジ科の落葉低木です。

枝を束ねて箒を作るとこから山箒とも言います。

葉は楕円形で互生し先はやや鋭頭形です。

花は、9月ごろから新枝の先に円錐花序を付けるのところから、和名が来ています。

花序は直立し、淡紅色の小花を横向きに多数開かせます。

花弁は線形で3枚から4枚が反り返って丸まり、雄しべが長くまっすぐに伸びるのが特徴です。

全草にグラヤノトキシンという有毒成分が含まれます。

黒部峡谷の岩場を真っ赤に彩るのは、穂躑躅もその一つです。

宇奈月温泉周辺の紅葉の見頃は、例年であれば11月7日前後です。

天人草(テンニンソウ) シソ科

天人草(テンニンソウ)は、宇奈月の山中の木陰に群生するシソ科の多年草です。

茎は直立し1mぐらいになり、葉は長楕円形で対生し、鋸歯縁で両端は尖っています。

花は、淡黄色で茎頂に細長い花穂をつくって、密につきます。

4本のおしべと1本のめしべは花柱とともに長く、花外に付き出しブラシのような形です。

シソ科の植物としては大型で、穂状の蕾を天人に見立てて名前が付けられたようですが、天人には連想しがたい形です。

同じシソ科の見返り草と形がよく似ていますが、見返り草も見返るほど美しくはありません。

天人草と見返り草の命名を理解するには、まだまだ自然と向き合う必要があります。

秋の野山では存在感があります。

黒花引起し(クロバナヒキオコシ) シソ科

黒花引起し(クロバナヒキオコシ)は、宇奈月の林道沿いに生えるシソ科の多年草です。

日本海側に多く分布し日本の固有種です。

茎頂に円錐花序を作り5mm程の小花をたくさんつけます。

花はあまり目立ちませんが色が黒に近い濃紺なので、自然の中では珍しい色です。

茎は直立し、シソ科特有の方形で、高いもので1m50cmになります。

引起しは、強烈な苦みがあり、弘法大師が瀕死の重病人に飲ませたら起きあがったという伝説から命名されました。

別名を延命草ともいいます。

引起しの仲間には、黒花、亀葉、白山亀葉等の種類があります。

信楽の器に、小さな花がちりばめられた黒花引起を晒菜升麻(サラシナショウマ)や唐糸草(カライトソウ)等と一緒に活けると風情があります。

白鬚草(シラヒゲソウ) ユキノシタ科

白髭草(シラヒゲソウ)は、宇奈月の山地の湿った陰地に生えるユキノシタ科の多年草です。

葉は、ハート型で茎を抱くようについています。

茎は分岐することなく直立で、茎頂に白い花を1個つけます。

和名は、白い5個の花弁の縁が糸状に細裂している形状を白髭に見立て、白髭草と名付けられました。

かつてはよく見かけましたが、今は限られた場所にひっそりと咲いています。

毎年、種がこぼれ少しづつ増えています。

梅鉢草も同じ境遇です。

釣舟草(ツリフネソウ) ツリフネソウ科

釣船草(ツリフネソウ)は、宇奈月温泉の山中の湿った所を好むツリフネソウ科の一年草です。

草丈は40cmから80cmになり、茎は多汁質で瑞々しくて太く直立して分岐し、帯赤色で節が太くなり水揚げが難しい花です。

葉は、広皮針形で先は尖り細かい鋸歯がつきます。

夏から秋に茎の上部から細長い花序が伸び総状花序となり、それぞれ数個の花を付けます。

赤紫色の花は小花柄をもち吊り下がり、小花柄の基部には小さなホウをつけます。

花の形が船がぶら下がっているような形なのでこの名前がつきました。

一年草なので種で増えます。

果実は、触ると勢いよく飛び、種族を増やす工夫がなされています。

秋の朝露に濡れた紅色の花は、静まりかえる深山にひときわ艶やかさを呈しています。

胡麻菜(ゴマナ) キク科

胡麻菜(ゴマナ)は、宇奈月温泉の山地や道端などに普通に生えるキク科の多年草です。

葉は、両面に短毛のある長楕円形で互生し裏面には腺点があります。

9月から10月にかけ茎頂に小さな白い頭花を散房状に密に付けます。

茎の高さは1.5mにも達する野菊なのでよく目立ちます。

葉の形が胡麻の葉に似ているところから、胡麻菜と名付けられたようです。

若菜は香りが楽しめ、茹でておひたしにしたり、そのまま天婦羅として食すことができます。

晩秋は、沢山の花をつけた胡麻菜が目立ちます。

2番花を見つけ出し、芒などと生けると名残りの秋を楽しむことができます。

秋桐(アキギリ) シソ科

秋桐(アキギリ)は、宇奈月の山の林内に生えるシソ科の多年草です。

葉は対生して長い葉柄があり葉身は三角状鉾形で先が尖っています。

角ばっている茎は,シソ科の特徴です。サルビア属なので赤いサルビアと同じ仲間です。

花は鮮やかな紅紫色で、9月から10月に茎の先にまばらな総状花序をつくり、数個づつ輪状に咲きます。

萼は筒状唇形で、花冠は基部が筒型で先は大きく2唇に開き下唇は広くて3裂します。

花の形状が桐の花に似て、秋咲くので秋桐と名付けられました。

これからは、秋の花が存分に楽しめます。

晒菜升麻(サラシナショウマ) キンポウゲ科

晒菜升麻(サラシナショウマ)は、宇奈月温泉の低山から高山に広く分布するキンポウゲ科の多年草です。

早いものは9月の初めから咲き、山鳥兜と同時に咲き始めます。

沢沿いに山鳥兜の群青と晒菜升麻の純白が秋の青空の下、風に揺れている様は自然が作り出す最高の芸術です。

名前の由来は若葉を煮て水で晒して食べるところからきています。

キンポウゲ科の植物はアルカイロイドを含んでいる毒性の物が多い中、最初に食した人の勇気に感服します。

漢方の升麻は、この地下茎からとり古くから解毒、解熱用として用いられました。

私は、古い青磁の花入れに鳥兜と共に好んで生けます。

葉の形が実に見事で、最高の取合せです。

山鳥兜(ヤマトリカブト) キンポウゲ科

山鳥兜(ヤマトリカブト)は、宇奈月の深山に生えるキンポウゲ科の代表的な多年草です。

地下に猛毒(アコニチン)を持った紡錘形の塊茎がある毒草で、茎の長さが1m以上になり、立ちあがって湾曲します。

毒の強さは植物成分では最強で、天然の物ではフグに次ぐといわれています。

鮮やかな青紫色は遠くからでも目立ちます。

花の形が、舞楽で頭にかぶる鳥兜ににているので、この名前がつきました。

葉は、互生で切れ込みが深く、キンポウゲ科の特徴がでています。

花が終わると果実が、鳥の足のような形になります。

鳥兜から取った毒薬をブス、ブシ、ウズとよび、河内地方に生える鳥兜をカワチブシ、京都北山に生える鳥兜をキタヤマブシとよばれています。

この毒を服用するとあまりの苦しみのあまり顔が歪むところからブスという言葉が今でも使われています。

田村草(タムラソウ) キク科

田村草(タムラソウ)は、宇奈月温泉の山地の斜面に生えるキク科の多年草です。

茎は直立し、大きいもので高さ150cmになります。

葉は羽状で切れ込みが深く、刺がありません。

9月から10月にかけて、茎や枝の先に薊に似た頭花を付けます。

頭花は紅紫色の多数の筒状花からなり、くびれた花床から広がる形は実に美しく秋の山野草の中では最もすっきりとした容姿です。

宇奈月の山地では一時数が少なくなりましたが、周りのイタドリやヨモギなどの大形の草を除去しながら日当たりを確保することで、数が少しづつ増えてきました。

秋の草原にはなくてはならない山野草です。