蟋蟀在戸(きりぎりす とにあり)

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<「秋草の図」塩崎逸陵>

10月18日から七十二侯は「蟋蟀在戸(きりぎりす、とにあり)」で、二十四節気「寒露」の末侯にあたる。

季節は晩秋、冬がそこまでやってきているので、蟋蟀(きりぎりす)が戸口で鳴く頃という意味。

部屋の室礼も秋草の掛け軸から紅葉物に架け替える時期である。

一雨ごとに秋の深まりが感じられ、黒部の山々の稜線は紅に染まりつつある。

黒部の流れは増々清くなり、サケの遡上が始まる。

サクラマスは皐月の頃に遡上が終わり、今は黒部の川の深い淵に潜んで、支流へ移動する頃合いを探っている。

そろそろ黒部奥山の初冠雪の便りが届く頃だ。

今日は、塩﨑逸陵画伯の秋草の軸の前で名残惜しんで杯を傾ける。

塩﨑逸陵は、富山県高岡市出身の日本画家で東京美術学校(今の藝大)に学び、川端玉章、寺崎広業に師事する。

気品あふれる花鳥図や人物画を描き色使いが美しい。

作品創作のため延楽でたびたび逗留したようだ。

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菊花開(きくのはな ひらく)

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<宮廻正明:「道の空(薮田小学校)」>

10月13日から七十二侯は「菊花開(きくのはな、ひらく)」で、二十四節気の寒露の次侯にあたる。

菊が咲き乱れる頃という意味。各地で菊祭りが開かれる頃である。

芸術の秋、黒部峡谷セレネ美術館では開館25周年を記念して「宮廻正明展:(無極)」が開催されている。

宮廻正明画伯は、近年では最新の科学技術と芸術を結び付けたクローン文化財のリーダとして脚光を浴びている。

最初の部屋に展示されている大作が「道の空」、富山県氷見市の薮田小学校である。

取材時にはすでに廃校になっていて、解体される運命にあった。

平成5年、ブリお越しの取材に行く途中、薮田小学校の前を通過したとき校庭にはいくつもの水たまりがあり空と雲が映りこんでいた。

宮廻画伯は直ぐにスケッチを始める。

薮田というと浅野コンツェルンを一代で築き上げた浅野総一郎の故郷である。

京浜工業地帯の生みの親でもある。

このプロジェクトに昭和2年から加わるのが、宇奈月温泉の生みの親の山田胖である。

浅野は、山田胖の電気事業に対する優れた見識と卓越した経営手腕を高く評価し、系列会社へ役員として迎え入れる。

宮廻画伯の作品は二人の結びつきを物語っているかのようでもある。

山田胖氏のお孫さんが東京芸術大学で、宮廻画伯の後輩であるというのも不思議な縁である。

展覧会の会期は10月13日から11月25日まで。

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鴻雁来(こうがん きたる)

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<透明度を増す黒部川>

10月8日から二十四節気は「寒露」となる。

夜空に輝く星が冴える頃、秋が徐々に深まり夜は肌寒く朝夕の露が一層冷たく感じられるようになる。

七十二侯は「鴻雁来(こうがん、きたる)」で、雁が北から渡ってくる頃という意味。

これに対して半年前の七十二侯は「鴻雁北(こうがん、かえる)」で雁が北に帰っていく頃で、今年は4月10日だった。

黒部の川は、流れる水の透明度を増しながらサケの遡上を待っている。

川沿いに設けられたやまびこ遊歩道の足元には、冷たい露に覆われた野菊が咲き誇っている。

紫式部の小さな実も赤紫色に染め始める頃である。

七十二侯は豊かな感性が育んだ日本の暦である。

いよいよ山装う季節の到来である。

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蟄虫坏戸(むしかくれて とをふさぐ)

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<秋の山野草:更科升麻を生ける>

9月28日から七十二侯は「蟄虫坏戸(むしかくれて とをふさぐ)」で二十四節気「秋分」の次侯にあたる。

すだく虫たちが土の中にもぐり始める頃という意味。

虫たちの冬支度である。

半年前の七十二侯は「蟄虫啓戸(すごもりのむし とをひらく)」で、冬眠していた生き物が春の日差しの元に出てくる頃という意味。

蟄虫(ちっちゅう)とは地中にこもって越冬する虫のことで、今はまさに蟄虫の忙しさである。

秋分の日を境に日は弱く短くなる。

黒部の山では秋の山野草が花を咲かせる。

谷筋に白く開花するのは更科升麻。

キンポウゲ科の植物で、藍色の鳥兜等と共に咲いている。

足元には朝露に濡れた秋桐が、紫の鮮やかな色を呈してくれる。

秋の深まりが感じられる山路である。

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雷乃収声(かみなり すなわちこえをおさむ)

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<国立天文台:今日の星空>

9月23日から二十四節気は秋分に入る。

春分と同様、昼と夜の長さが同じになり、本格的な秋の始まりとなる。

この日を境に陽は弱く短くなる。

七十二侯は「雷乃収声(かみなり すなわちこえをおさむ)」で、二十四節気「秋分」の初侯にあたる。

黙黙と力強く湧く入道雲は消え、夕立時に鳴り響いた雷が収まる頃という意味。

これに対して七十二侯の「雷乃発声(かみなり すなわちこえはっす)」は、二十四節気「春分」の末侯で、今年は3月31日であった。

秋が深まるにつれ月影さやかな時季を迎える。

中秋の名月とは、太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のことを指す。

今年は9月24日が中秋の名月で翌日の25日が満月となる。

中秋の名月と満月が1日ずれる。

国立天文台暦計算室の暦Wikiによると、ずれることがしばしば起きるようだ。

満月の前後の月はことのほか美しく明るく輝く。

晴れていればまさに中秋の名月をめでることができる。

平安時代から続く中秋の名月をめでる習慣を大切に残したいものだ。

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玄鳥去(つばめ さる)

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9月18日から七十二侯は「玄鳥去(つばめ、さる)」で二十四節気「白露」の末侯にあたる。

春に日本にやってきた燕が暖かい南の国へ帰る頃という意味。

20日は秋彼岸の入り。

暑さ寒さは彼岸までの言葉通り燕の渡りが始まる。

燕がやってくるのは七十二侯の「玄鳥至(つばめ、きたる)」で、二十四節気「清明」の初侯にあたり、今年は4月5日だった。

宇奈月温泉で飛び交う燕は岩燕で尾羽が短くやや小型。

燕が去る頃は早朝ウォーキングの服装も長そでシャツとウインドーブレーカが必要となる。

今年のモーツアルト音楽祭は9月15日から17日までの3日間行われた。

日中の雨の影響で昨年より200名少ないが5500名の鑑賞客で山間の温泉街がにぎわった。

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鶺鴒鳴(せきれい なく)

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<薄の穂が棚引く僧ヶ岳登山道>

9月13日から七十二侯は「鶺鴒鳴(せきれい、なく)」で二十四節気「白露」の次侯にあたる。

季節は中秋で鶺鴒が鳴き始める頃という意味。

鶺鴒は春から秋にかけて宇奈月の道をチチッチチッと高い鳴き声を発して、長い尾をしきりに上下に振りながら小走りに動くのが観察される。

宇奈月谷などの水辺に棲む。

古くは日本神話の国産みの神聖な鳥として日本書紀に登場する。

鶺鴒の季語は秋。

我が国では、白というと雪を連想するが中国では五行思想により、白は秋の色とされている。

野の草花に宿った朝露が白く輝く白露の頃、鶺鴒のオスが伴侶を探して鳴き始める。

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草露白(くさのつゆ しろし)

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<白露が輝く釣舟草>

9月8日から二十四節気は「白露」となる。

朝晩の気温差が大きくなると露が降りるようになる。

暦便覧には「陰気ようやく重なり露凝って白し」とある。

夏の気配を残しつつも朝夕は涼しくなり、草花に朝露がつくようになるという意味。

七十二侯は「草露白(くさのつゆ しろし)」で二十四節気「白露」の初侯にあたる。

草に降りた露が白く光って見える頃という意味。

早朝、山道を行くと草露に足下が濡れる。

行き会いの空は、秋の雲に覆われる。

釣舟草に白露が輝き秋の訪れを感じさせる。

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禾乃登(こくのもの すなわちみのる)

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<鏡町の輪踊り>

9月2日から七十二侯は「禾乃登(こくのもの、すなわちみのる)」で二十四節気の処暑の末侯にあたる。

禾の文字は、植物の穂の形からできており豊かな実りを象徴する。

稲穂が膨らんで黄金色になる頃という意味。

越中八尾のおわら風の盆は9月3日で終了。

今年は雨にも遭わずおわら情緒を十分に味わうことができた。

9月1日から3日間で、昨年より5万人下回ったが21万人のお客様が坂の町に押しかる。

おわらの深みのある叙情性が訪れる人々の心を打つ。

新作おわらの代表作は小杉放庵が詠んだ「八尾四季」である。

今年も放庵の出身地日光から小杉放庵研究舎のメンバーが最終日に訪れる。

<八尾四季>
ゆらぐつり橋手に手をとりて
 渡る井田川 オワラ 春の風
富山あたりかあの灯火は
 飛んでゆきたや オワラ 灯とり虫
八尾坂道わかれてくれば
露か時雨か オワラ はらはらと
若しや来るかと窓押しあけて
 見れば立山 オワラ 雪ばかり

昭和3年に川崎順二に招かれて詠った歌である。

その前後に必ず延楽で長逗留された。

延楽には小杉放庵の足跡が数多く残っている。

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天地始粛(てんち はじめてさむし)

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<東新町の街流し>

8月28日から七十二侯は「天地始粛(てんち、はじめてさむし)」で、二十四節気「処暑」の次侯にあたる。

粛には鎮まる、弱まる、縮むという意味あり、ようやく暑さが鎮まる頃という意味。

立春から数えて二百十日は、9月1日にあたり台風が多い時期と重なる。

実った稲穂を強風から守るために、風を鎮める祈りの踊りが行われる。

越中八尾の「おわら風の盆」で、9月1日から9月3日までの三日三晩、哀愁を帯びた鼓弓の音色に乗って街流しが行われる。

踊りは、農作業の所作を表し、上新町では町内の通りを使って大輪踊りが行われる。

地元の踊り子の後ろについて踊りを学のも、おわらの楽しみ方の一つでもある。

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